ちょっと効いてる

by 赤池あすら


 ムーサよ! 伝承された英知を語れ。俺にすべての真実を聞かせてくれ...俺は宮古の六郎太の偉大な人生を見たんだ、彼の話をみんなに聞いてもらいたいんだ。俺がここで書けるのは、もちろん話の一部でしかないわけだけど、でも事の核心と、起こったことの要点はすべて拾われていくと思う。
 すべてのヨーギンに敬意を。ドヤーナのなかで。


 1 飯を食うのに必要な時間

 宮古に生まれて長いけど、ここを離れようと思ったことはない。ここの海と空と森は、俺の期待を裏切ったことはない。そして友達たちと、お袋と。すべてがしっくりくる、俺の故郷。ここを一時にしろ、離れることになるとはね。
 高校を出て、すぐに宮古犬保存会に入った。それからというもの、ほとんど毎日訓練を続けてきて、もう6年になる。いろいろと説明が必要かもしれない...隣の居間からは、お袋の歌が聴こえている...爺ちゃんは、勇敢だった。仲間と一緒に敵軍の司令官に会おうと思って、往来を堂々と歩いていった。それで銃撃に倒れた。白旗を知らなかったんだ...親父は宮古犬保存会で長く働いていたが、1976年、デトロイトで、ニューヨークボーリング協会との抗争に破れた。そう...俺の仕事は、いまでは希少な在来種宮古犬の散歩と、アメリカの支配から脱するために、シリウスネタを効かすこと...ユタのお袋は、毎日みんなに歌を聴かせている...抗支配組織、宮古犬保存会の長年の敵は、アメリカのニューヨークボーリング協会だ。撃手の選考が始まったのはほんの3年前だが、抗争はすでに40年以上続いている。俺は、この抗争を終わらせるだろう。撃手たりえる勇気があるのは、俺だけだ。

 ヌークリヤガンのコンピュータシミュレーション試験で一番とった。これで二連覇だ。シリウスネタ、エクスタソーマ25の適正試験でも同様に一番。誰も文句はなかった。迫る対決に旅立つ撃手は、俺に決まった。俺は金星に行くのだ。金星で、エクスタソーマ25をぎんぎんに効かして、核爆発の嵐の中、ニューヨークボーリング協会の撃手と一騎打ち...条件は一緒だと思う。敵さんの武器も、俺のとまったく同じヌークリヤガン以外にはありえない。なぜと言って、この設計図は、たったひとつしかないからだ...そしてネタも一緒。シリウス星系で採れる外宇宙植物から精製したエクスタソーマ25は、長らく連中の専売商品だ。あのシリウス星系のシンジケートと取引があるのは、地球では、俺たち宮古犬保存会と、アメリカの暗殺結社、ニューヨークボーリング協会と、あとはブルンジの...でもやつらは25はお呼びじゃない。ちなみに、NBSの連中も、週に一回はアスファルトに穴を開けるパフォーマンスをやらなくてはいけなくて、警察とつきあったりとか、いろいろと危ない橋を渡っているらしい...もっとも、俺はNBSのことは大して知らない。俺が知っているのは、宮古犬保存会の強固な郷土魂だけだ。ここにいるのは全員地元の連中だし、希少な宮古犬は、俺達の長年の飼育によって、絶滅を免れている。コカ・コーラは、会のロビーの自販機にあるけれど、滅多に買われることはない。俺達は食堂のろはの冷えた麦茶を飲むことにしている...

 休暇をもらった。愛情ある人たちに挨拶をしておけということだ。金星行きは二週間後に迫っている。俺は、死ぬ気はさらさらしないのだが、一緒の時間を過ごしたい人はいた。幼なじみの利香ちゃんに電話した。
 「おーっす」
 「六郎太くん! あ、お休み?」
 利香ちゃんのかわいい声。会いたくてしかたがない。
 「ああ、明日から三日もらった。餞別もらい歩こうと思ってる」
 「なみえちゃんかわいかったねー」
 なんの話だ...そうか、サミットあってから、まだ会ってないんだった。
 「泳がない? 明日」
 「そうだねー。お昼くらいに行くね」
 デートの約束をして、気分が良くなった。死...? 俺が? 利香ちゃんに別れの挨拶? 馬鹿な。NBSの撃手に勇気で打ち勝ち、島に帰ってくるだけだ。この仕事が終わったら、利香ちゃんと一緒になって、従兄の大ちゃんの船を借りて、海人になるんだ。それこそが、俺、赤池六郎太の人生と、もうずいぶん前から決めているんだ。

 利香ちゃんと入り江に行った。俺の相棒、宮古犬のシッダルタを連れて。この入り江は、崖をつたうか、船に乗らない限り発見できないから、滅多に人は来ない。ジョイントを一服して、裸になって泳いだ。シッダルタと、利香ちゃんと、海と。海は、いつもとなにも変わらなかった。俺たちは海水のなかで、抱き合い、泳ぎ、体を自由に動かせることを実感した...
 「効くと、どうなるの?」
 利香ちゃんが、俺の肩を掴みながら言った。宮古犬保存会の様々な秘密。本当は、他言無用だ。でも利香ちゃんは、俺からすべてを聞いている。会の仲間たちも、そのことは知っている。だが、問題はない。そんなに融通の利かない集まりではないんだ...エクスタソーマ25の効き目についても、利香ちゃんに話したことがないではない。彼女の質問は、きっと、命の危険についてだ。
 「大丈夫、気違いになるわけじゃないよ...怪物になるわけでもない..」
 怪物...どうかな、それは、そうかもしれない。鎧をまとった、青黒い、カマキリの化け物...なにしろ、至近距離での核爆発以外には、無敵の戦闘力を得るんだ...エクスタソーマ25。こいつが充分に体中を満たすには、だいたい飯を食うのに必要な時間がかかる。兆候は、砂に水が染み込んでいく感覚だ。砂に水が浸透していくにしたがい、体は、強固になっていく。脳は、鉄になる...座標は0。そして瞬時にすべての地点へ飛んでいける...俺の大事なもの...自由になんでもできれば、それでいい。そんなに複雑なことではないのに、有史鉄線の網が、いつでも俺たちを包囲している...だが俺は誰にも負けない。屈しない。俺は世界中の誰よりも努力して、誰よりも強くなる。そして俺は言う。俺は勝ったと。
 「もう上がろうよう」
 利香ちゃんのお下げが、俺の首に絡まる。彼女が俺に抱きついたまま、首を振ったから。海水が髪をつたっていく。
 「もうばてた?」
 「まだいける。でも、上がるの」
 俺は首をかしげた...ふうん...直接にというほどでもないが、まあ、そういうことらしかった。俺たちは浜までクロールして、ぐったりと、ボディブローを食らったボクサーみたいなふらつきかたで、浜を歩き、木陰に寝そべった。
 「ここで?」
 と俺。まさかと思いながら。
 「わたしんち行こうよ」
 「そうだね」
 ちょっと日を浴びて、服を着て、岩をつたって町へ戻った。利香ちゃんの家へ行った。利香ちゃんのお爺さんは、まだ漁から帰ってなかった。利香ちゃんは、服を脱いだ。俺もTシャツを脱いで、立ったまま、パンツも脱いで、利香ちゃんに覆い被さって、接吻した。それから、いろんなことをした。

 2 All Tomorrow's Parties!

 快晴だった。
 実地訓練は、そう何回もあるわけじゃない。なにしろ、宮古犬保存会の予算の大半が、シリウス・シンジケートに支払われている。エクスタソーマ25は、その効力のみならず、価格においても、間違いなく宇宙一だ。なんにせよ...バイナガマ浜から幹おじちゃんの赤花丸に乗って、東シナ海へ...宮古犬保存会は、いわゆる門中だ。俺たちはヒキって言う。みんな祖先が同じ同族だ。長い伝統を持つ、海人族、海賊結合体が母体だ。会のメンバーの大半が、普段は船で漁に出る。俺の会での親方は幹おじちゃんだ。子供の頃から世話になっている。幹おじちゃんは、普段は釣り船として使っているこの古びた、けれど今日に限って最新鋭の機器を搭載した船に、船頭ではなく、撃手最終訓練の棟梁として、船上で風を切っている。本土の人間ではないことがあきらかな、そして海人であることがあきらかな、潮に焼かれて、赤黒い、四角張った顔で、太陽を真上にして、水平線を眺めている。
 「今日は、あっついぞう」
 幹おじちゃんが言った。俺はそばにいて体操していた。俺に言っているのだ。
 「気持ちいいね」
 「ロク、調子どうだ」
 「悪かねえ」
 俺は、四肢を充分に伸ばして、首を回して。調子はいい。体は軽い。天気も上々。あとはネタを効かすだけ。
 「無茶したらいけねえ」
 「わかってるよう」
 俺は足首をぐるぐる回す。俺は笑った。幹おじちゃんががらにもなく俺を気遣っているのがおかしかった。
 「ロク、笑い事じゃねえ。おまえに全部かかってんだからな」
 幹おじちゃんは俺に向き直って、まじめに言った。俺はまた笑った。
 「ああ、わかってる」
 そう、俺にはわかってる...3年前からな。NBSとの金星での決闘が決まった日から、俺には、俺の仕事のすべてがわかっているんだ。俺の体には、人類の伝統の、生死がかかっている。金星で俺が核爆発とともに砕け散れば、疑いなく、人間の勇気は、伝統は、踏みにじられる。自由は、死語になる。任せてくれ、みんな。それを知っているこの俺が、負けるわけがないぜ。
 体操もひと段落したかと思うや否や、魚倉から智帆ちゃんが飛び出してきた。
 「魚臭あ」
 鼻を摘んでおどける。彼女は幹おじちゃんの娘。つまり俺の従姉。そして宮古犬保存会の会員。俺は最後の一伸び。
 「当たり前じゃねえか。我慢しな」
 俺が言うと、智帆ちゃんはむっとして、
 「ロクちゃんはいいわよ。気持ちよくなって空飛んでればいいんだから。いい仕事だわ」
 なんぞと言う。まあ、魚臭いところで計器とにらめっこする智帆ちゃんよりは、いい仕事かもしれない。智帆ちゃんも、撃手の候補生だった。俺のライバルだった。だが悪いな、俺のほうが、努力が一枚上だったんだ。
 「なんなら、金星行き、ゆずるかい。核爆発に焼かれて、焼けただれる仕事だ、楽じゃない」
 「冗談よ」
 首を振る智帆ちゃん。幹おじちゃんは若い衆のおどけ合いに付き合うほど暇じゃない。船室へ行って進路を確認している。
 「あんたの仕事は、立派だわ。私には無理」
 「まあな」
 「がんばってね」
 ありがとう、智帆ちゃん。まあ俺の根性を信頼してくれ...そんなことやってるうちに、台湾との制海域近く、通称”吹き溜まり”に到着した。この海域は、レーダー網の穴になっている。古くから、この辺りは、そういう場所だった。つい百年前まで、このあたりの珊瑚島には、シナ海賊たちが潜んでいた。ここが俺の効かしドコロ...風が緩やかに海面をなぎ、太陽は燦々と、俺たちを照らしている。潮の香りが、俺の鼻を刺激して、子供の頃、親父と一緒に海で泳いだことを思い出させる。
 「さあて、ロク。やるかい」
 と幹おじちゃんがエクスタサンゴを俺に手渡す。赤珊瑚の骨格を主原料に、核爆発にも耐えるように作られた最新鋭パイプ。大きさも形も百円ライターに酷似。オート発火式で、エクスタソーマ25の充分な吸引に、一秒とかからない。俺は蓋を開けて、エクスタソーマ25の微少な結晶を眺める。淡いピンク色で、ちょっと青い香り。シリウス星系のいくつかの惑星に自生していて、シリウス共同体が最近栽培しはじめた。もちろん、人間にしか、効果はなくて、シリウス共同体の連中は、香木として部屋に置いたり、焚いたりしていただけらしい。ところが、こいつが人間の血管に取り込まれるや否やね....
 「ロクちゃん、重力波検知機、良好です!」
 魚倉、いやセンサー室から智帆ちゃんの元気な声がして、俺はTシャツと海水パンツを脱いで、素っ裸になると、アクネアの選手のように、ヨーガの呼吸法をしばし使い、体を実感する。そうしてエクスタサンゴを口に当て、ひと吸い。俺の鍛え抜いた肺に、三分間とどめる。コストダウンだな。実際の格闘中はこうはいかないが...三分間、なにも考えない。徐々にやってくる、死の兆候を見ているだけでいい。砂丘に水が染み込み、水の、黒い模様が、砂丘全体へ、広がっていく...あるいは、成層圏から落とした石が海に落ち込み、波紋が、血の海を覆っていく...そんな様子を眺めて、体の中と、外とについて、忘れていけば、それでいい。食事に必要な時間の間は、ヨーガの作法を使う。智帆ちゃんに、音楽をリクエストしておいた。単純なのがいいんだ。ソウルミュージックが、この”吹き溜まり”にこだましている...

 Yeah! I'm beginning to see the light...Gonna dance all night! Yeah! Yeah!

 息を二十回も吐いて、もっとも、吐いている覚えはないが、そうしていれば、クリヤーライトが頭上を照らし出す。光に、体を投げ出す。すべてをさらす。それでO.K....ドアを閉めるんだ、ビートが鳴り続けている、永遠の夜へ、ダンスしに行くんだ、そうドアを閉めればいい...もう目を覚まして、時計を見なくてもいいとこへ向けて、ドアを閉めれば、そこには、粒子が舞い、時間が絡まる景色が...あとは踊ればいいんだ...腕が伸びていき、疲れを追いやる。全身に目をつける。すべてが俺のもの...
 「ロクちゃん、30分経過です! 重力膜検知! レベル4! もう一服どうぞ!」
 O.K.智帆ちゃん。エクスタサンゴを、歪曲し、亀の甲羅のように堅くなった唇に当てる。フルート奏者の息つぎの要領で煙を取り込む。この煙を、風に飛ばすころには、俺は再生を充分に完了していた。体は石。握り拳を両手に作ってみれば、拳の辺りの空間が、心地よい音を立てて、ねじれていく。
 「ロク、どうだ、行けるか」
 幹おじちゃんの声が聞こえる...彼との子供の頃からの出来事が、一瞬に俺を覆う...エクスタソーマ25による再生中に、自我を信じることは難しい。俺はいつでも、身近な人たちとの思い出を利用して、崩壊を防ぐ...
 「光が見える...」
 俺はつぶやく。その声を、俺自身は、音楽と解け合わせ、エネルギーに変えていく。行ける。調子はいい。相変わらず、いい効きしてるぜ。
 「ロクちゃん、重力膜レベル10に達したよ! 躍動テストどうぞ!」
 智帆ちゃんの声とともに、俺は甲板を蹴って、素晴らしい景色を見に、東シナ海の遥か上空向けて、飛び出した。背骨を伸ばして、顎を上げれば、視界に入るところ、どこへでも、一瞬に到達できる。足で空気を蹴って、蹴るたびに、スピードを上げることができる。空の色が、紺を通過して、紫色になる辺りまで跳躍して、身を翻し、地球を眺める。美しかった。雲が海から舞い上がって、新しい場所へ向けて、群をなして、旅にでていく。音楽が聴こえる。俺には、周囲五千キロの音楽が、すべて聴こえている。みんなが生きている音が、俺にも聴こえて、俺を感激させる。歪曲した水平線から、宮古島と、先島の島々が、くっきりと、海にへばりついているのが見える。俺は、宮古へ飛びたくなった。あそこへ帰って、みんなに、いつもありがとうと、言いたくなって、懐かしいみんなと抱き合いたかった。足を蹴ろうかと思ったけど、踏みとどまった。レーダー網に検知されては事だし、だいたい、いまの俺の、戦闘機と合体したカマキリみたいななりを見たら、みんな仰天するだろうしな...
 「ロク、遊んでんじゃねえ!」
 おっと、”吹き溜まり”海上の赤花丸から、幹おじちゃんの小言が聞こえてきた。親方の言うことは、聞いておかなければな...体を回転させて、海を頭上に、空気を蹴る。二秒だ、全速力を使ってみると、カウント2で、赤花丸の真上に到達。
 「ロクちゃん、量子崩壊はじまってるみたい。はやく終わらせちゃおう!」
 智帆ちゃんが叫んだ。俺の周囲の空気が、崩壊していっている。あまりに崩壊が進めば、アメリカの放射線センサーが気づくかもしれない。
 「なんだって? 効かしすぎたか?」
 「ロクちゃんはりきりすぎよう! 重力膜レベル13超えてます! 力まないで!」
 「なんてこった、跳躍は良好だ、次行こう」
 すると船室から幹おじちゃんが飛び出してきて、
 「おい、なんか飛んで来るぞ」
 と言った。
 「マッハ8です!」
 智帆ちゃんの絶叫。面倒なことになってきたようだ。ここは金星じゃない。ここがいくら”吹き溜まり”だからって、俺が戦闘機と格闘すれば、日米のレーダー網が、必ず異常な強さの放射線を捕らえる。
 「逃げるかい」
 俺は言ってみたが、もう無駄だとわかっていた。
 「なんともならん、待ってみよう」
 俺は深呼吸して、全身の力を抜いていく。俺のとがった耳の辺りで、粒子がはじけていく音が、少しずつ、止んでいく...
 「どうしよう、ロクちゃん!」
 「わめかないでくれよ」
 せっかく集中して気を静めていたのに...智帆ちゃんが慌てふためいている間にも、正体不明の戦闘機らしきものが、けたたましいジェットエンジンの轟音をがなりたてて、俺をめがけて、ぶっ飛んできやがる。みるみる、みるみる...
 「あ、確認しました! F-18です!...搭載兵器...不明」
 「なんだ」
 幹おじちゃんがセンサー室、いや魚倉に入っていく。
 慌てないでくれ...俺はどうにかしそうなんだ...
 「距離5キロ...来ます!」
 ジェットエンジンの轟音が、もう耐え難いまでの勢いで、俺の脳髄を揺さぶっていた。俺は耳を塞ぎ、意識を塞いだ...どうだ...もう行ったか...ミサイルを撃つなら、撃てばいい。たっぷりお返ししてやるからな...目を開ける...意識を開ける...
 「なあに、これ!」
 声に、甲板に出てきた、智帆ちゃんを振り返る。見回せば、A4の、紙切れがたくさん舞っている...なにごとだ...
 「なんなの、これ!」
 智帆ちゃんが紙切れを手にとっている。俺は、青黒くなった手で、紙切れを一枚、空中で捕らえる。目に映す。

 All Tomorrow's Parties!

 そう書いてあった。NBSの連中も、なかなかやってくれるもんだ。すべては金星で。連中も、約束は守る質らしい。

 3 まあ歌って踊れば

 金星行きも近いってのに、いろいろと、たいへんなことになっている。
 始まりは幹おじちゃんだったんだ。あのおやっさん、あんなに世話焼きだったとは、いままで知らなかった。
 夕方に、俺がシッダルタの散歩から帰ると、幹おじちゃんが来てたんだ。それでお袋と話し込んでて、何事かと思ったら、
 「おいロク、おまえ、利香っぺと祝言上げろ」
 なんてこと言うんだ。どういうことかと思っていろいろ話を聞いてみると、どうも、俺に、金星へ死ぬつもりで行ってもらっては困ると、こういうことらしかった。
 「美子さんのことも考えろ。利香っぺのとこだって、親父もお袋も、本土へ行ったきりどこにいるかもわかんねえ。善じいさんがまだあんなに元気だからいいが、おまえ、まあ、考えてもみろ」
 と、そんなことを言うので、俺はすっかり弱ってしまって、お袋に、
 「そりゃ利香ちゃんと一緒になるのはいいけど、なんでこのくそ忙しいときにわざわざさあ」
 と言ってみたんだが、お袋はお袋で、
 「六郎太」
 「なんだよ」
 「利香ちゃんといろいろ、しているんでしょう」
 なんてこと言う。
 「そりゃ、してるけど」
 「じゃあ、早いほうがいいと、お母さんは思うんだけどねえ」
 俺には、お袋の魂胆がわかっていた。お袋は、俺の祝言で、カミダーリをやるのが、長年の夢だったんだ。お袋は、ただ歌いたいだけなんだ。

 金星行きの最終的なテスト、チェックと、利香ちゃんとの祝言と、両方やらなくてはいけなくて、ばかみたいに忙しかった。金星に旅立つためのコンディション調整を怠ってはいけないのに、まったくつらい試練だった。宮古犬のシッダルタだけが、俺の気持ちをわかってくれていて、いつも俺に慰めの視線を送ってくれていた。利香ちゃんは、浮かれ上がっていて、話にならなかった。ただフェラチオが、以前より長くなったような気がする。それは嬉しかった。

 久貝の町の住人が、全員集まったかと思うほどだった。祝言当日。200人くらい来てるんじゃないか。小さな俺の家の周囲を囲んで、思い思いに談笑したりしている。宮古犬保存会の会員に至っては、欠席はひとりもなし。たいへんなにぎわいになってしまった。
 「ロク、なにしてんだ」
 仲人の幹おじちゃんに見つかった。俺は、ジョイントを吸う場所を探して、垣根の回りをうろうろしていたのだ。
 「なに、もう始まる?」
 「もうちょっとだ。いま美子さん着替えてる。早くこっち来ておけ」
 もう仕方がなかった。俺は居間へ戻って、利香ちゃんの隣に座った。利香ちゃんは今朝、朝日に照らされて会って以来、笑顔が張り付いたままだった。
 「どこ行ってたのー」
 「ちょっと石に」
 「ずるい!」
 「でも駄目だった」
 「なんだあ」
 そうこうするうち、宮古犬保存会の長老たちが、三味線と鼓を打ち出して、さていよいよカミダーリが始まった。居間の、廊下のふすまが開いて、お袋登場。白装束も粋に着こなし、さすがに年季が違う。様になっていた。
 「美子おばさん、かっこいいね!」
 利香ちゃんが俺にささやく。まあ、いまのうちにはしゃいでおくのがいい。これからきっと、大変な事になるんだからね。
 お袋は突っ立ったまま目を閉じて、音楽を聴いている。お袋は、ジョイントは吸わない。その変わりに、腹を減らす。もう四日間なにも食べてないはずだ。そして、緑茶を飲む。それから、音楽を聴く。お袋の作法だ。俺は保存会でヨーガの作法を訓練したけれど、お袋は、独自のやり方で、ヨーギンとほぼ同じ行程を歩いて死ぬ。違っているのは、まあ、お袋が、シャマンだということだ。シャマンは、一時、仮に死んで、いわば、演技をする。ヨーギンは、完全に死ぬ。そして演技ではなく、本当に生まれ変わる。シャマンは目を閉じて舞うが、ヨーギンは、目を開いて、石になる...なんにせよ...お袋は死んだみたいだ...そして鼓に合わせて、子宮をのぼってきたらしい...歌が聞こえる...

 空を見いや 明るい なんかがある 私にゃ見える あんたら見えるか
 爺さん 婆さん 曾祖父さん ずーっと 昔のお母ちゃん
 みんな生きてた 歌ってた 見えるよう わかるよう
 血が流れる みんなの血 私の血 海に 空に 道ばたに
 まあ歌って踊れば だれでも見えるもんだけん

 お袋の歌と舞いに、みんなが泣いた。みんなが笑った。そのうち長老連中が踊りだし、若い衆も、居間でも、庭先でも、道ばたでも、久貝の町中で、みんなが歌い、踊りだした。俺と利香ちゃんは最高の、完全な笑顔で、みんなと一緒に泣き、踊ったんだ。

 4 セイトセイノアイダ

 バルド=セイトセイノアイダ=号に乗り込んで、シミュレーション訓練通りに計器チェックを繰り返す。種子島宇宙センターの管制室には、宮古犬保存会のメンバー全員が陣取って、俺の健闘を祈ってくれている。利香ちゃんも、お袋も。
 「六郎太!」
 お袋の声が、ヘッドフォンにこだまする。やれやれ...
 「はいよ」
 「なんか、問題ないかね」
 俺は吹き出して笑った。あってたまるものか。
 「ないよー。そういう話は、幹おじちゃんに聞いてよ」
 「そうかね」
 そばで、利香ちゃんが絶叫しているのが聞こえる...
 「六郎太くーん! 利香です!」
 「はいよー」
 「気分平気? 気持ち悪くない?」
 まったく...
 「良好です、幹おじちゃんと替わってくれ」
 「冷たーい!」
 「利香ちゃんわかってんの? 本番なんだぜ?」
 「だから心配なのよ!」
 ああ、そうか...だが、この俺には、心配は無用だ。
 「まあ、石にでもなって、本でも読んで待っていておくれ。必ず帰ってくるから」
 「うん。待ってるよー」
 「幹おじちゃんと、替わってくんないかな」
 「うん!」
 かわいい利香ちゃんとしばしお別れ。だがまあ、ものの数時間で、また君を抱けるから、俺はさみしくなんかないよ。
 「どうだー」
 「第八回チェックすべて完了です! 六郎太チェッカー...」
 これを言うのはいつも恥ずかしい。俺の身体機能のチェッカーについての報告。
 「異常なし! 六郎太、良好!」
 「よーし、こっちのデータと照合中...お、合ってる合ってる」
 準備万端。バルド号発射まであと...カウント249。

 音楽が聴こえる。小さな覗き窓からは、バルド号の回転に伴って、ときおり、強烈な、混じりけのない感じの光が、差し込む。太陽は、俺がここで音楽を聴いている間も、宮古のみんなが星空を眺めている間も、ずっと、猛烈な勢いで、核融合を続けている。遥か太古から、遥か未来に至るまで。音楽が聴こえる。こういうときは、単純なのがいいんだ。ヘッドフォンから、ソウルミュージックが聴こえる...

 We're gonna have a real good time together!
 We're gonna laugh and dance and shout together!
 Na-Nana-Nana-Na!

 5 A Nuclear Party's

 金星大気圏への突入角度を微調整したら、あとはエクスタソーマ25の、青く、豊饒の象徴の、あの味を、味わえばいい。そうだ、CDを、あのシタールの名手のラーガに切り替えてな...素っ裸になって、エクスタソーマ25を8ミリグラム搭載した、エクスタサンゴを唇に、ラーガに身を浸し、吸い込めば...あとは、古今の、宇宙に横たわる、ヨーギンたちの助力で、水を飲めばいい。光子でできた水を...石のような水を、俺の砂丘にばらまけばいいんだ...そうすれば、確実に、完全な行程で、死ぬことができる。宮古の六郎太は、何度目か、またここに、しかし最後からひとつ手前の、死を迎える。一筋の光を見て...神々に会釈...

 完全な、無上の三昧のど真ん中で、俺は金星の地表に降り立った。シミュレーション通り、再生のコントロールは、成功している。全身が青黒い、石にまとわれた、重力膜を放ち、放射線をまき散らす、無敵の対ヌークリヤガン甲虫...だが、再生したいまでも、宮古のお袋や、利香ちゃんや、島のみんなのことは、忘れるわけにはいかない。エクスタソーマ25による死と再生がもたらす恍惚に対抗するには、俺はこの手段しか知らない...リボルバー大の、シリウス共同体とブルンジのカバラー党の共同設計による、地球でつくられた、たったふたつのヌークリヤガンのうちのひとつを、俺は右手に握っている。ヌークリヤ弾頭弾は、6発を装填できる。俺の腰に、あと24発が、炸裂するのを待っている...俺は耳を、とがって、ハウンド犬の耳か、あるいは、蝿の羽根のようになった、耳を、極限まですます...だが、音よりも先に、俺の石の皮膚のほうが、量子崩壊による放射線の掃射を、ぱちぱちと、跳ね返し、あるいは、突き通らせていた。やつが来た...時間きっかり、疑いなく装備は俺と同型のヌークリヤガン...俺は、邪悪で、また獣の性質の、衝動を感じて、金星の大気を深く吸い、押しとどめる。そしてエクスタサンゴを口に当て、1ミリグラムを吸って、サンゴを腰の抗放射線弾倉に収めると、重力膜を限界まで強めるために、両手を合わせ、押しつけ合い、ぐっと力む。それから握り拳をつくって、思いきり胸を張る。血の流動スピードを、極限まで上げる。風が俺をないだと感じた途端だ。一瞬にしてやつが飛んできた...距離1キロまで到達して撃鉄の反響...ヌークリヤ弾頭弾の第一射は、一刹那ののちに、俺の体の中心めがけて、一分の狂いもなく...右に飛ぶ。俺が耐えられる限界距離を充分に超えたところで、ヌークリヤ炸裂の光と嵐が、金星の一点を駆けめぐる。俺はやつの動きを追う。最高スピードはマッハ100オーバー、なんてやつだ、俺の鍛えぬいた移動スピードと互角だ。こうなれば、もはや先手を取って、虚を突いていくほかない。ヌークリヤガンを右手にやつがまき散らす放射線と時空のゆがみを追う。立て続けに二連射。たちまち視界がヌークリヤ炸裂の閃光に満たされ、俺の石の体を爆風が襲う。四方に足をめぐらす。上空へ飛んでやつの放つ弾頭をかわす。押されてはいない。俺はやつを見失ってはいない。ヌークリヤ炸裂の嵐を確実に見切り、かわしている。飛ぶ...間違いない。間違いなく、やつは無上の努力を怠らなかった、不屈の、最高の撃手だ。気を抜けば、一瞬ののちには、俺はヌークリヤ弾頭の直撃を受けて、こなごなに、溶けていくだろう。だが俺は負けはしまい。英知を信じている限り、俺の目標は、つねに、必ず、達成されるんだ...体をひるがえす...エクスタサンゴを口にもうひと吹い...全速力で反対へ疾走...また一発発射。かわされた。瞬く間に逃げ去った。追う...太陽の反対側、夜へ向けて、やつを追う。ヌークリヤ炸裂の華が、俺とやつの周囲で、いくつも炸裂し、俺たちの鉄製のカマキリのような陰を、金星の地表に描き出す。金星上空を駆けめぐり...夜から昼へ...金星を二周もめぐって戦った。ヌークリヤ弾頭弾を、都合50発放って、金星の地表をえぐり、雲をまき散らした。だが決着はつかない。俺はやつを追っていた。弾頭弾はあと三発。重力膜をまとい、量子崩壊の嵐をくぐり抜け、金星の大気をかきわける。すると、移動する時空のねじれが、唐突に、静止した。急ブレーキをかけた。一瞬にやつとの間合いが縮まる。俺は少なからず驚く。足を伸ばして止まる。空中にとどまる。金星の重力に、前方で、なにかが引きずられていく....放射線に包まれたなにか...やつめ、ヌークリヤガンを捨てやがった...弾切れ...やつはやる気だ。いいだろう...どうせ、やつのスピードに、ヌークリヤ爆風は追いつけないんだ...俺は右手の力を抜く。ヌークリヤガンを落とす...さあ来やがれ...エクスタサンゴを吸う。いつのまにか、あと一ミリグラム。どうやらそろそろ決着のつけどきのようだ...
 Goooooooooooooooooo!!!!!!
 と大気が振動した。すさまじい音が俺の耳に届くはずだ。だが、やつの姿が、俺の水晶の目に飛び込むほうが速かった。体長3メートルあまり、肩をいからし、重力膜を猛烈に吹きだし、青黒い石の影は、真正面から、俺を睨みつけ、決戦を挑んできた...鏡に映る俺のよう...どうやらやつも25の切れどきらしい...一気に勝負をつけたいのは、こちらも一緒さ...空中を疾走するやつが右手を開き、掌を俺に向けたかと思うと、分裂していく原子が、はっきりと見えた。俺は右へ飛ぶ。続いて地表めがけて空を蹴る。たちまち上空で核分裂の嵐。エクスタソーマ25を取り込み、筋肉を精巧に操れば、拳程度の領域で、大気や石を核分裂させることができる。それを投げ飛ばすこともできる。これが直撃すれば、俺の半身は消し飛ぶだろう。やつにはこの核分裂弾を自前で放つ心得がある。なんという敵だ。こればかりは、俺にしかできないと思っていた...そう考えているうちにも、やつが核分裂の閃光を俺に放ってくる。俺はS字に飛び、爆風をよけながら、地表の石を拾い、両手に握って、へその辺りから血を呼び出し、掌まで運ぶ。核が揺らぎ、はじけだしたら、両手を開く。これで核分裂していく粒子が、やつに飛んでいく。だがやつは見切っていた。なんなく飛び去ってかわした。続けざまに崩壊していく石を投げつけてくる...らちがあかねえ...やつも同じ心境らしい。俺の核分裂弾をかわしながら、徐々に接近してくる...そういうことだ、肉弾だ、もはや勝負をつけるなら、これしかなくなった...間近に...二十メートル先の上空にやつが現れた。俺は地表に突っ立って、やつの出方をうかがう。にやりと笑ったように見えた一瞬のちに、やつが先に動いた。飛びかかってきた。真正面から。右足を伸ばして、この距離で最大速度で移動した。俺は身を反転させた。わずかにかわした。やつの強烈なキックが、金星の大地に炸裂し、半径一キロにわたって粉々に崩壊させた。俺はもはや組み合うことしか考えなかった。背後のやつに振り向きざままっすぐに正拳を放つ。顔面めがけて。顔が、虫の、蝿の顔が残像とともにゆらいで、これをさける...ひとしきりボクシングがはじまった。スウェイバック、ストレート、ダブルで。ジャブのトリプル、ボディへフック、見事にガードされた。やつのスマッシュが大気を切り裂き量子崩壊の風が俺の顔をなぐ。俺のストレートがやつの肩口を捕らえ、えぐる。やつのボディへのアッパーが俺の内蔵を遥か10キロかなたへ吹き飛ばす。猛ラッシュ。左右の連打。やつも負けてはいなかった。恐るべきスピードでストレートを連発してきた。二発顔面にくらい、俺の蝿の目のひとつはえぐりとられ...1ラウンド終了...互いに飛び退いてパイプをふくむ...やつがパイプを地表に投げ捨てる。ネタ切れか。こちらも同じ。俺もエクスタサンゴを捨てて、深呼吸一服、やつめがけて飛びかかり...両手を合わせて力比べに持ち込んだ。こん身の力を込め、わき出すエネルギー掃射で、地表をえぐりながら、俺たちは組み合った...だがやつは膝をつかない。飛び退く。ふたりとも肩で息をしだした。もはや限界が近いようだ。25はもうないし、あっても、これ以上は体が持たない。
 「Pretty good party,Ha」
 唐突に、喘ぐ息づかいの間断を使って、やつがしゃべった。
 「Yeah」
 俺が答えるのを待ってから、やつは飛んだ。上空へ。彼方へ。俺は追った。すると上空からまた核分裂弾の嵐が舞い降りてくる。俺はそのひとつひとつの原子が崩壊していくのを見ながら、かわし、大気を握りしめ、分裂弾を返していく。原子核がはじけていく閃光に包まれながら、俺はやつについて考える。宮古犬保存会と、NBSについて。金星の夜と昼について。俺を照らす太陽と、分裂して、分解し、崩壊していく粒子たちについて。俺は考える。思い出す。地球と、シリウスと、過去の時間たち。血。俺は見る。やつが動くさまの美しさを。やつの完璧な、不屈の闘志を。すると俺の全身は、無上の、白を突き抜けた、なにもない、すべてがある、透明で、あらゆる時間を内包する、神々の寝所にある、英知の光に満たされた。それは俺の蝿の、水晶の、鉄の目から涙を流させ、満面の笑顔をつくらせ、俺の周囲の核爆発の嵐と閃光を、地平線までいっぱいの花畑に再生させた。俺にはもはややつと戦うことはできなかった。飛んでいき、やつを見つけると、飛びかかった。するとやつは両手をひろげた。俺たちはマッハ50を超えて激突し、そのまましっかりと抱き合いながら、地表へ落ちていき...そして俺は洞窟へ...25切れ模様...中陰へ逆走...

 6 After hours

 暗い洞窟を抜けて、座標が書かれた廊下を走っていると、やつと出くわした。やつは、アイルランド人らしい、素っ裸の、見事な偉丈夫だった。
 「Are you stunned?」
 やつが言い、俺は、
 「Little bit」
 と答えた。するとやつは笑いながら俺を抱きしめて、y6へ向かって、走っていってしまった。それだけだった。
 俺は一筋の光を見つけた。近づいていくと、その光は、ドアのような、アーチ状の光だった。ドアを開けるような感覚で、光るアーチに飛び込むと、俺と抱き合うやつが死んでいた。蝿とカマキリと戦闘機と、人間、アイルランド人が合体したような、再生過程のまま、完全に死んだヨーギンが、地表に横たわり、核融合する太陽の光を浴びていた。
 俺はわずかに残った25の効力を使い、やつを埋めてやった。シリウス共同体の連中が見つけたら、すぐさま持ち去られて、解剖されてしまうだろうからな...バルド号へ戻り...次第に襲ってくる、おびただしい傷からの激痛に耐えて...船に乗り込み、帰還プログラムをセット...俺は勝った...だがやつも勝った。俺が勝ったのは、やつにじゃない。NBSでもなく。俺は俺の悪徳に勝った。俺はこの仕事をやりとげた。俺は努力を怠らなかった...震える手で、音楽をかけた。もう血がなかった。CDを選ぶ余裕はなかった。流れてきたのは...利香ちゃん、会いたいよう...お袋...もっと歌を聴かせてくれ...俺は宮古の六郎太...俺には見える...光が...邁進するに足る英知の光が...

 そのドアを閉めたら
 永遠の夜が訪れるんだよ
 陽の光を忘れてさ
 奈落とやらに挨拶しよう
 みんな歌い踊り
 楽しみに浸る
 けれどそのドアを閉めたら
 二度と新しい日を迎えなくてすむんだ


 〔ちょっと効いてるここに終る〕


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