by 大道寺尋昭
父親は自殺し 母は狂死した
姉は蹂躙され 襤褸雑巾のような 無惨な無言の帰宅
無上
無常
無情
妹は丸太にされ
舌を抜かれ
猫耳を装着され
首輪につながれてどこかに連れていかれた
僕は広くて空虚な家に一人残され
マナを待ち続けた
恐かった
一人だった
誰も助けてくれなかった
身の危険を察知した僕
寝室のクローゼットの中に身を潜めると
扉を硬く閉ざし
考えることをやめた
外には鬼がいる
悪魔がいる
破壊神がいる
いくつもの闇が僕を溶かしていく
涙を拭くことさえせず
黒い虚空を見つめる僕に
草水晶のような声
君が僕の名を呼ぶ
僕が君の名を呼ぶ
パンドラの箱 一条の光
紅の十字は薔薇に
そして世界を覆う
暗愚は月のように破れた
白い羽の生えた君
人形か玩具のような手で僕の手を握りしめてくれた
小さなあたたかいてのひら
僕らは緑色の風に乗って
大空 を舞う
鳥たちの歌声
黄金の夜明け
全てのものに祝福されて
しかし
君は神様に嘘をついていた
僕らを繋ぐ 白いネットワーク は
白羽の矢 となり
君の心臓を
二度
三度
幾度と無く射抜く
僕は墜落した君を追って地獄へ
地獄
地獄
地獄
地獄
阿鼻地獄
叫喚地獄
無間地獄
僕は再び地上に立った
白衣の死神が廃墟に種をまいている
綿が飛ぶ
仙人掌の刺にユキが舞い降り
血を流した覇王樹が咲く
僕は月を切り裂いて闇を超える
了